「はじき」という害

「はじき」や「みはじ」という言葉をきいたことはあるでしょうか?発展形で「くもわ」とかもあります。

一見便利そうに見えて、実は猛毒で学習習慣が狂いますよ、という話です。

「はじき」とは、速さと時間と距離(道のり)の関係式をてんとう虫のように配置して、一気に解いてしまおうという方法です。

速さと距離がわかっていれば、「は」と「き」のところに代入すると数値が求められるので、時間が簡単に求められる、ということです。

速さの関係式

速さと時間と距離の関係式は3つあると紹介されることが多いと思います。

  • 速さ ✖️ 時間 = 距離
  • 距離 ➗ 時間 = 速さ
  • 距離 ➗ 速さ = 時間

この3種類ですね。

素直な子は全て覚えようと頑張ります。暗記が苦手だったり数量や式に強い子は一つの式を覚えて、あとは式変形で頑張ります。めんどくさがったり、そもそも考える気がない子は諦めるという選択をするかもしれません。

さて、どれが正解でしょうか?

算数や数学は式を覚えるための教科ではない

ここでは算数と数学の違いは区別しません。どちらも数量を学び、世の中の現象を数値化(抽象化)し一般的なものとして考える学問とします。

算数や数学を計算するための学問にしてしまうと結論が変わってしまうのですが、そもそもそれが筋違いになります。今回の速さの問題にも関わりますが、例えば、物体の動きを数式化して、他の物体の運動にも使えるように、また微積やベクトルのような考え方を用いて、それ以前の解析や未来の動きを予測するなどをするための学問として、進めていきます。

算数や数学には様々な公式が出てきます。面積を求める公式や、二次方程式の解を求める公式、倍角の公式など。これらを覚えて問題に応じて公式を使って式を作って、それを計算して答えを出して。そんな答えが何の意味があるのかわからないけど、とりあえず答えが出たから良いや、というのが数学の勉強法になっている人は少なくないと思います。

いわゆるパターンマッチングという方法ですね。

パターンマッチングとは

パターンマッチングでの解法とは、特定の型に当てはめて機械式に解くこと、とします。数学や物理の基本問題レベルだと、とても相性がいい解き方だったりします。暗記が得意だと、問題ごとの解法ごと覚えてしまって定期テストを乗り切ったという方もおられるのではないでしょうか。

このパターンマッチングで解いていく方法ですが、なまじ点数が取れることがあるので、正当な方法と捉える人が現れます。実際に先生と呼ばれる方の中にも、そのような認識の方がおられることを確認しています。

今回の結論になりますが、この勘違いが毒になる、ということです

定期テストで良い点数が取れたらそれでいいじゃないか、と思いますか?わざわざそう書くので身構えると思いますが。

定期テストでは点数が取れるのに、実力テストでは点数が落ちてしまう。という話を聞いたことはないでしょうか?もっと単純に、その時は覚えられるのに、時間が経つと忘れてしまう、という話は聞いたことがないですか?もしくは、実体験としてないでしょうか?

そもそも、覚えた形通りに式を作って解くという勉強、何の役に立つんでしょうか?

パターンマッチングが毒になる瞬間

パターンマッチングで、数学や物理をはじめ、多くの教科は、基本問題がほとんど解けるようになります。基本問題は、その単元で学習したやり方ができていますかという、同じ方法で解ける問題を集めただけですからね。そして、定期テストもそういう属性が強くあります。だから、定期テストに限って言えばパターンマッチングはとても有効です。

だから、この勉強方法が正しい、と錯覚します。この錯覚が結構やっかいです。

なぜ、毒なのか

点数が取れるのになぜ悪いのか。

答えは簡単です。覚え方次第では応用が全く効かないやり方も混ざっているからです。全てがダメとは言いませんし、使い方次第ですが、1番の問題は「覚えたら大丈夫」という意識が強く残ってしまうことです。多分、センター試験程度であれば、パターンマッチングでも通用していたと思います。でも、2次試験でそれなりのところには通じないはずです。そもそも物理化学で点数を取れないから、文系に進むことになる可能性が高いです。

このように、通じる実績があるから、考えることを辞めてしまいます。そして、一部に通じて一部に通じないとなっても、その原因としてパターンマッチングとは突き止められません。一部で結果が出ているため。

このように学習姿勢が狂ってしまうことが一つ目の問題です。

毒が表面化する時期

パターンマッチングの限界は人ぞれぞれですが、高校の物理や化学や、もしくは数学の三角比あたりでは多いと思います。あとは確率のようなパターンが見えにくいものもありますね。確率の場合は、PかCかの二択ですら怪しくなります。いずれも、覚えましょうという公式が山ほど出てきたり、覚えたところでどう使えば良いのかわからないという問題が混ざってきて、思考力が問われることで限界を迎えます。

地頭が良い子はそれでも乗り切れますけど、そんな才能のようなものを期待してパターンマッチングを推し進めるのは愚かだと思います。

「はじき」を小学生で体験し、その学習方法が崩壊するのは高校生になってから。毒という表現を使った理由です。

考える学習とは程遠い授業が正になることも

基本的な知識は覚えないとスタートできません。だから、全ての暗記を否定するわけではありません。

ただ、概念に関わるものまで型にはめて覚えようとするのは間違いで、型を変えられなくなった時点で勉強に行き詰まり、そもそもそれまでの勉強の価値すら問われる事態になります。

それでも、教えている側も悪意はなかったりします。少しでもわかりやすいものを提供し、気持ちよく次に進んでほしいと。その結果が、安易なテクニックに走って毒を撒き散らかすことになりますが。酷い解釈をすると、小学校の先生は高校のことがわからなくても成り立つんですよ。これに関しては英語の問題で確信に変わっています。

意識的にであっても無意識であっても、結果として中高で苦労しているという子たちの声を聞かないようにしている先生を、私は無責任だと言っています。

酷い授業の例

悪い授業として一番説明しやすいのは、はじきの図そのものを穴埋めにして、その中身を答えさせる小テストを実施している授業です。つまり、「はじきを覚えること」が目的になってしまっています。覚えないと点数がもらえないので、子供たちからしたら「覚えなくてもいけないもの」になりますね。

基本的に、公式を覚えることを問題にしてしまう先生は素質を疑います。目的はそれで良いのか?と。

速さの意味がどこかに消えているんでしょう。

概念を正しく理解させるとは

例えば、速さの問題ですが、そもそも時速や分速の意味はどういう物でしょうか。

時速6kmというと、1時間で6kmの距離を進むという速さを示します。だから、時速6kmで3時間進めば、掛け算で求められます。そして、これが大事なところですが、同じ時速6kmで30分進んだ場合はどうしたら良いでしょうか?

これを6✖️30とする可能性があるのが丸暗記の危険なところです。問題外ですけど。答えが180と出てから気づくのも、そもそも最初から考えていないのが悪いです。仮に、6✖️30/60という解き方もありますが微妙です。

30分は1時間の半分なので、6を半分にして、3kmと解けるからです。

1時間で進む距離という意味が分かっていれば、低学年の子でも答えを考えることができます。

教科書に速さの関係式が乗っていたり、酷い時には学校の先生や塾の先生が「はじき」を推奨し、どんどん子どもたちの考える時間を奪っていき、気がついた時には、型にはめて解くやり方に流されていきます。

繰り返しますが、それが悪いと思ってなくて、むしろそうすることで速さの問題で躓く子が減るくらいに思っているから、そのまま「割合」にも「くもわ」みたいな意味不明な関係図を取り入れてしまうようです。

人は本当に悪いと思わないと改善はしないです。

「はじき」が毒であるまとめ

「はじき」そのものは便利に計算できるものですが、それを覚えることを目的にしてしまったり、これを覚えることで速さの定義を考えなくなったり、時間の関係から思考を外すことを経験してしまうと、それ以降、考えるという習慣が薄れていき、覚えて何とかするという姿勢に学習の思考が偏っていきます。

毒も使い方一つで薬になるのですが、使い方が下手な人が多いです。特に指導者自身が数学が得意ではなく、パターンマッチングのような方法で乗り越えてきた人は、その自分のやり方が正になります。気持ちはわかりますが、なぜ苦手だったかを振り返って指導に生かすのが筋だと思います。はじきやさくらんぼ算を覚えることをテストにする時点で間違っているんですよ。

地頭の良さで解決できる子は少数派ですし、勉強の方法はいろいろあって然るべきです。ですが、物事の意味をしっかり考え、理解し、その上で自分なりにどうやって応用問題に対応していくか。これが学習の本来の姿であり、2020年以降の教育改革は、その方向を目指していたはずです。

AIに使われるか、AIを使う側になるか。2020年の頃は遠い話だったこの話題が、今の時点でもう現実のものとなって、AIから逃げるとかいうふざけた結論を出す大人も少なくありません。目の前から無くしたところで世の中はもう変わらないのに。

飛躍しているようですが、日頃の学習習慣のツケは人生を狂わせます。大人になってから、しっかり考えて自分の答えを出せるように、小学生のうちからしっかり考えて問題に挑戦する学習姿勢と時間的な余裕を持った勉強をしていけたら、と思います。

再度、算数や数学は式を覚える科目ではない

ここまで読んでいただいた方には通じると思います。

算数や数学を式を覚えてそれに当てはめて計算して答えが出れば良い科目という認識にしてはいけません。そうではない認識で指導するのと、数学が物理やその他の世界に繋がっていることを知っていて指導するのでは、全く内容が変わります。たとえ、両方センター試験で満点近い点数を取っていたとしても、です。

理科や社会も暗記科目ではない

ついでのような感じになりますが、理科は自然のルール、社会は人が作ったルールを学ぶような科目ではありますが、人の生活に密着した全てを基礎としてその上に立つ科目です。単純に用語を覚えることはスタートラインでしかなく、その知識を使ってどう考えていくかという科目です。

これらの科目を暗記科目と言えてしまう指導者は、テストのための指導者であり、人生の先を見た指導は苦手だと思います。

どちらが優れているかというよりも、目的を分けて考えれば良いと思います。

枚方ロボットプログラミング学習塾の個別学習の授業方針

枚方ロボットプログラミング学習塾では、安易な暗記には走りません。その分、すぐに結果が出るような学習にはならないかもしれません。必要に応じた暗記と思考を講師が判断し、将来に活きる学習ができるように、個別対応を徹底しています。